年齢を重ねて脂が抜けはじめた人間は、花→鳥→風→月、の順番に興味を抱いていくという説を開陳したのはタモリでしたっけ。最後にたどりつくのが月を愛でる趣味ということになりますが、まあこれは言葉遊びなのでしょうね。
私の花鳥風月観は松岡正剛の刺激的な名著『花鳥風月の科学』の影響下にあります。花鳥風月は日本人の表現世界を維持するためのモード生成システム。山、道、神、風、鳥、花、仏、時、夢、月という10のコードの組み合わせがモードを生みだす、と。
4月、大島の三原山をふもとから眺めれば新緑に桜の花が霞のようにたなびいて、「島の春は白」という印象を抱いたのですが、義母は「むかしの大島の春は赤かった」と言い、こんな一節を教えてくれました。
つつじ椿は御山を照らす
大島で御山(みやま。つまり「ザ・山」)といったらもちろん三原山のこと。かつては全山に紅い椿の花とつつじの花が咲き誇るのが遠くからよく見えたのだそうです。現在では桜の木が成長してつつじの花を追い越したので、赤が目立たなくなったとか。
調べてみると、この一節は『大島節』のなかにありました。
わたしゃ大島、御神火育ち
御神火(ごじんか)というのは活火山である三原山の火のこと。…というわけで、最近は大島の谷口酒造がつくる焼酎「御神火」をひいきにしています。もっとも、島民が居酒屋で飲んでいるのはもっぱら神津島でつくられる「盛若」ばかりですが。

白い季節を過ぎて、6月の大島には紫陽花のネットワークがひろがっています。三原山をめぐる道路はその名も「あじさいレインボーライン」。濃い青、藍紫、ピンク、林のなかの幽霊のような薄緑色。

サンセットパームラインの道ばたに、名前を知らない背の高い木が白い花をたくさんこぼしています。葉っぱが紫陽花によく似ているけれどなんという植物なのかしら、と思っていたら、大島バスの乗務員さんのブログでこれがハコネウツギだということを知りました。(写真下) やはり紫陽花の仲間。

植物の名前をひとつ覚えるのが、思いのほか嬉しい。「エゴノキ」も覚えました。こちらもサンセットパームラインの遊歩道にたくさん咲いています。
松岡正剛によれば、「山」は古代人にとって彼方の別世界。山の向こうと地上のここ、ふたつの地点をつなぐのが「道」。向こうからここにやってきて情報をもたらすのが「風」と「鳥」。