村上春樹の朝食 BUNDAN COFFEE & BEER (目黒区駒場)
日本近代文学館内のカフェ「BUNDAN」のメニューに、村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』に登場する朝食がある、ということはハルキストにはかなり知られていると思いますが、この一皿を私が実際に味わうことができたのは最近のこと。
手元にある『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』下巻から、該当の文章を書き書き写してみます。十月三日の月曜日、午前七時二十五分、二人分の朝食づくりがスタートします。
私は鍋に湯をわかして冷蔵庫の中にあったトマトを湯むきし、にんにくとありあわせの野菜を刻んでトマト・ソースを作り、トマト・ピューレを加えた。そこにストラスブルグ・ソーセージを入れてぐつぐつと煮こんだ。そしてそのあいだにキャベツとピーマンを細かく刻んでサラダを作り、コーヒーメーカーで珈琲を淹れ、フランス・パンに軽く水をふってクッキング・フォイルにくるんでオーブン・トースターで焼いた。
朝にしては手の込んだ料理ですが、なにしろ主人公はこの晴れた日に「人生をひきはらう」ことになっているので、最後の朝食なのです。
BUNDANが使用するバゲットは三宿の名店 シニフィアン・シニフィエ のもの。コーヒー豆は三軒茶屋の Cafe OBSCURA。太いソーセージは自家製で、下にマッシュポテトが添えられています。
カフェ内には『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の読者なら一瞬にしてぴんとくるであろうオブジェが置かれており、スタッフに「あれはもしや小道具として?」とお尋ねしてみましたが、残念ながらハルキストではないスタッフによれば「社長の趣味です」とのことで、物語のための演出かどうかは明らかにはできませんでした。
それにしても、村上春樹のページにあらわれる食べものはどうしてあんなにいきいきと食欲をかきたて、コーヒーやお酒はどうしてあんなに確実な幸福に感じられるのでしょう。
同書のなかの、巨大な穴のような空腹感をかかえて「ねじでも食べられちゃいそうだ」という主人公と、ブラックホールみたいな胃拡張の図書館リファレンス係の女の子が、イタリア料理店でワインを飲みながらたいらげたもの。
●オードブル(6皿!)
小海老のサラダ苺ソースかけ
生ガキ
イタリア風レバームース
イカの墨煮
なすのチーズ揚げ
わかさぎのマリネ
●パスタ
タリアテル・カサリンカ(主人公)
バジリコ・スパゲティーニ(図書館の女の子)
マカロニの魚ソースあえ(二人でシェア)
●魚料理
スズキ(アーモンドをあしらった蒸し焼き)
●まだ食べる!
ほうれん草のサラダとマッシュルーム・リゾット(主人公)
温野菜とトマト・リゾット(女の子)
●デザート
葡萄のシャーベット
レモン・スフレ
エスプレッソ・コーヒー
全品、味が想像できますが(主人公が注文したパスタは、たぶん自家製のタリアテッレですよね。ソースは不明)、この場面ではとりわけスズキがおいしそう。 主人公が説明するスズキのためのエシャレット入りバター・ソースの作りかたが素晴らしい。香ばしくローストしたアーモンドのぱりぱりした食感も口内に再現されます。
BUNDAN COFFEE & BEER (ブンダン コーヒー・アンド・ビア)
東京都目黒区駒場4-3-55 日本近代文学館内
TEL 03-6407-0554
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