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2013年9月11日 (水)

料理された童話の旅・前篇

8月31日、夏休みの最後の日。作家・安房直子の童話を題材にした心躍るイベント『料理された童話の旅 (3)』がおこなわれました。

  朗読とパフォーマンス:東山佳永さん
  お料理:藤間夕香さん(夕顔)
  ギター:三富栄治さん
  珈琲:ねじまき堂(かうひい堂+ねじまき雲

主催はかうひい堂の内田牧さん。そして、旅の基地となったのは青梅のねじまき雲・陽でした。両者ともに書籍『コーヒーピープル』でご紹介させていただいた、静かで熱い珈琲魂を抱くお二人ですから、初のコラボレーションとなるこのイベントにぜひ参加したいと思ったのです。

たまたま、8月に発売になった新刊『京都 カフェと洋館アパートメントの銀色物語』のなかで、独創的なすばらしい焼き菓子を作る京都のカフェの女性店主から、「お菓子作りの原点は幼いころに読んだ安房直子の『小さいやさしい右手』」と聞き、彼女の最初の童話集を読み返しながらページに綴った余韻がまだ私の中に残っていました。

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太陽のまばゆい昼下がり、旅の出発点である青梅のねじまき雲に集合し、案内人その1(内田牧さん)に率いられて多摩川にかかる橋を渡ります。

橋はいつも異界の入口。現実から物語世界への橋渡し。旅の導入部として、またとない演出でした。

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最初の舞台は、江戸時代後期の農家を保存した旧宮崎家住宅。杉皮と茅を重ねながら葺いたという屋根の量感! 

陽射しの中を歩いてきた眼には、古民家の室内の黒光りする床がことのほか暗く感じられます。かつては本当にこの囲炉裏ばたで、年長者が語る昔話に子どもたちが耳を傾けたこともあったでしょうか。

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白い浴衣で現れた東山佳永さんが座布団に正座し、安房直子の『鶴の家』の朗読を始めると、その声と、縁側で風のようにつまびかれるギター、時おり鳴る風鈴、庭先の虫の声、古民家が抱いている濃密な「場」の力との相乗効果で、参加者たちはいっきに不思議な時空へ。

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最初の一話が閉じられると、川原で軽食となりました。

先ほどの『鶴の家』にちなんで一枚ずつ描かれたお皿の上に、おにぎりと、こっくり味のしみた煮物が盛りつけられて。美しい眩暈を誘うようにして終わった物語が、舌の上でまた違うかたちとなって再現されます。

食べ終えるころに、もう一人の案内人(ネジさん)が参加者一人ひとりに「お葉書が届いています」と、第二の旅への不思議な招待状を配達してまわりました。

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案内人のあとについて明るい林をのぼっていくと、樹々のむこうに白い人影。彼女が葉書の差出人でしょうか?

麦わら帽子に白い花飾りをつけた彼女は、木漏れ日と優しく戯れていたかと思うと、不意に身をひるがえして緑の奥へと姿を消してしまいます。誘っているのか、逃げているのか。すでに第二話『野ばらの帽子』が始まっています。

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白い残像のあとを追う私たち。林のなかを降りながら、物語のなかへ実際に足を踏み入れていくようなおもしろさ。

人影のない茂みに、ひっそりと白い野ばらが咲いていました。そこに気配がして……

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あれは白い鹿でしょうか、それとも先ほどの人でしょうか。

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『野ばらの帽子』を体現する東山佳永さん。続きは【料理された童話の旅・後編】で。

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