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2013年8月 9日 (金)

新刊『京都 カフェと洋館アパートメントの銀色物語』

Book_2


東京書籍より新刊『京都 カフェと洋館アパートメントの銀色物語』が発売になりました。

京都でコーヒーを飲みながら散歩しているうちに遭遇した不思議なシンクロニシティの数々を軸に、大正時代最後の年に建てられたといわれる朽ちかけたアパートメントと、さまざまなカフェや喫茶店の風景を紀行エッセイのスタイルで綴ります。

掲載させていただいた新旧のカフェや喫茶店、そして洋菓子作家のNowheremanさんが稲垣足穂的・宮沢賢治的空間で月曜日の夜だけ開いているカフェは、あわせて45軒。


P1


いったん原稿を書きあげてからも、好日居(写真上)を訪れてなにげない会話を交わしていると、一瞬絶句するようなシンクロニシティが降ってきたりして。

本のデザインは福間優子さん、イラストは、私が紛失したはずの一枚の葉書がご縁となった素描家しゅんしゅんさんに担当していただきました。


P2


2年という製作期間のあいだにコーヒー話を聞かせてくださったカフェの方々、アパートメントにまつわるお話を聞かせてくださった関係各位、その他、本書にご協力をいただいたすべての皆さまに心より感謝します。ありがとうございました。

新しく出会った何人もの慧眼マスターから、喫茶店について、またコーヒーについて、忘れがたい名言をいただきました。


P3


生きている珈琲」でオーナーが引き合わせてくださった常連客の寺さんからは、こんな素敵な言葉を。以下、『京都 カフェと洋館アパートメントの銀色物語』本文より抜粋。


「コーヒーの値段の京都基準は四百五十円なんです」と寺さんは言う。

「それが、生きている珈琲は七百円。どんな味なんだろうと入ってみたら、たしかに濁りのない味ではありました。僕は自分の舌が絶対だとは考えないようにしていますから、そのあとも何度か通ってみて、四回目で赤ブレンドを飲んで、あっと思ったんです」

こういうお客さまを得たお店は幸運だ。寺さんはこどものころから京都のあちこちの喫茶店に出入りしていたそうだ。その中にはもちろん老舗のイノダコーヒや小川珈琲もある。

「僕にとってコーヒーは女性にとっての鏡のようなもので、そのときの自分のコンディションを映しだすんです。イノダコーヒでお昼を食べて、午後の仕事もがんばろうと思えるときは調子がいい。値段が高いなあ、と感じるときは調子が悪い」

ああ、コーヒー店との素敵なつきあいかただなあと思ってあれこれお話をうかがうと、現職に就く前は「吉田屋」という現存する京都最古のエスプレッソ専門店でアルバイトをしていたという。

「京都のエスプレッソは『ちきりや』という、いまはもう閉店した喫茶店が草分け。吉田屋のご主人は若いころにちきりやでエスプレッソを飲んで感動して、お店を始めはったんです」

吉田屋の場所を教えていただいた。次の京都滞在は吉田屋からスタートしよう。


P4                              桜並木に面した「& Noma Cafe」。


そうして私は吉田屋を訪れ、ご主人と奥さまの楽しいやりとりを聞かせていただいたのですが、大変残念なことに、ご主人は本の発売前に亡くなられました。ご冥福をお祈り申し上げます。

出会った人々の人生の一瞬の断片を織りこみながら、この銀色物語はまだ現在進行形で続いています。ページをめくってご覧いただけましたら幸いです。Amazonなどでも発売中。

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