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2008年9月 8日 (月)

『グーグーだって猫である』

“大島弓子育ち”のひとりとしては、初日に足を運ばずにはいられませんでした。犬童一心監督が映画化した『グーグーだって猫である』。

小泉今日子をはじめとする役者さんたちも、細野晴臣による音楽も、それから大島作品に欠かせない吉祥寺の街の風景もそれぞれに魅力的だったのだけれど、残念ながら全体としては少し首をかしげざるをえない出来だったように思います。

40代の天才漫画家と、猫と、アシスタントたちの日常。不意に宣告されるガン……という原作の設定に基づいて、脚本は映画ならではの物語を独自に創作しているのですが、映画がつけ加えたコミカルなシーンや、どたばたと吉祥寺の街じゅうを駆けまわるシーンなどが、いずれもあまり成功していないのです。

おそらく、原作をそのまま映像化したのでは淡々としすぎていて映画として成立しないし、猫のシーンばかりなので実写撮影は不可能、という判断があったのでしょう。だから、映画独自に動きのある物語を仕立て、また、話者としてアシスタントの女性(上野樹里)をフィーチャーしたことは、まったく妥当な解決策なのですが。

メゾン・ド・ヒミコ』のトーンでつくれば素晴らしかったのに、と思ってしまいます。監督としては、この映画でさまざまな賞を受賞してしまったので、今回は二番煎じのトーンにはしたくなかったのかしら。

大島弓子の描く世界は、一見スイートな空気をまとっていながら、救いようのない孤独や、心身の病や、どんな生きものも避けることのできない死を、彼女ならではの繊細なまなざしで鋭利に、しかも淡々と浮かびあがらせています。日射しの中でたんぽぽの綿毛がふわふわと街角を横切っていくような幸福感と、ぞっとするような孤独の深い淵が、なんでもない顔をして並んでいる日常。そんな日常を愛していこうとする静かな決意のようなもの。

だからこそ私は若い頃に何度も大島作品に救われてきたのであり、そんな彼女の世界を再現するのは、決してなまやさしいことではないのでしょう。

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コメント

大島弓子育ち!素敵ですね。確か「花の24年組」でしたっけ。
私も萩尾望都や大島弓子らの少女漫画をむさぼり読んだ記憶が・・・。
(そのときすでにあの方たちは巨匠過ぎて、自分が好きだったのは大矢ちきや内田善美だったのですが)
逆にブログを読んで映画が観たくなりました・・・。監督のフィルターを通して大島ワールドがどのように表現されているか、楽しみです。movie

投稿: erizo | 2008年9月10日 (水) 00時56分

犬童監督はこれまでにも『赤すいか黄すいか』『金髪の草原』という大島弓子の傑作2つを映画化しているので、大島弓子育ちのひとりなのかもしれませんね。彼には彼なりの大島弓子観がきちんと存在していることと思われます。
観に行かれる機会があったら、どうぞご堪能ください。目尻に素敵なしわのできた小泉今日子のたたずまいもチャーミングでした。

投稿: 川口葉子 | 2008年9月10日 (水) 22時25分

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受信: 2008年9月 8日 (月) 21時18分

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受信: 2008年9月14日 (日) 16時45分

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