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2008年7月16日 (水)

大竹昭子×穂村弘

昨年、著書に出会って注目していた言葉使いのふたり、『眼の狩人』の大竹昭子さんと、『世界音痴』の穂村弘さん。マイ・フェイヴァリットな2冊のそれぞれの著者が同じ壇上に立ち、写真をめぐるトークライブをおこなうと知って、青山ブックセンター本店に足を運びました。

このイベントは大竹昭子さんのユーモラスでインパクトに満ちた新刊『この写真がすごい2008』の出版を記念して催されたもの。いま書店に行くと、写真コーナーに平積みになっているのを見かけますね。新刊におさめられているのは、プロ/アマチュアを問わず、3歳から90歳までの人々が撮影した「すごい」写真の数々。なにをもって「すごい」とするか、それについてどう語るかに、大竹昭子の眼がよく表れています。

【トークライブの案内より】

 思いがけない瞬間。見たこともない景色。忘れられない一枚。
 世の中には、なぜかふと立ち止まってしまう写真がある。

 その写真はどこがすごくて、何にひかれるのだろう?
 これまで数々の写真を見て語ってきた大竹昭子と、
 数々の短歌と詩を詠み言葉を紡いできた穂村弘による、
 写真をめぐるトークライブ。

当日は穂村弘さんが『この写真がすごい2008』の中からセレクトした何枚かの写真をもとに、それについてふたりが話し合うというかたちで進行。スライドで映し出される写真が写真だけに、淡い笑いの絶えない2時間でした。

もっとも記憶に残ったのは、17歳の男子高校生が「お通夜のときに父親に撮れ、と指示されて撮影した」という下の写真。左下の布団にはおじいちゃんのご遺体が、右上の布団には、遠からずおじいちゃんのそばに召されるであろうおばちゃんが! ふたりの間に入っているのはご家族の方々なのでしょう。

Talkshow

「よくこんな発想をした!」と驚く大竹昭子さんの眼は、死者と生者が共に平穏な空気に包まれておさまっているこの1枚から、生と死は両極にあるものではなく、グラデーションになっているのだ、という考察を導きだします。

私は私で、命の連続性ということを感じていました。生命の火の消えたおじいちゃんはいとも安らかに横たわり、その命を受け継いだお父さん、さらにその命を受け継いだ子どもたちが、人間というものを営々と続けていくんだなと。

ところが、穂村弘さんはむしろ逆の感想を述べます。
「この写真の中で、生きている人は全員カメラ目線。カメラを意識していないのは故人だけ」
死者と生者は、まなざしにおいて、くっきりと両極に分かれているのです。
加えて、中央に縦に並んでいる若者たち3人の口元には微笑が浮かんでいることも指摘されます。これは記念撮影としてカメラを向けられると、ほぼ自動的に浮かべられる微笑なのでしょう。眺めれば眺めるほど、いろいろなことを考えさせずにはおかない「すごい」1枚です。

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コメント

葉子さん、こんにちは。

たしかに「すごい」1枚ですね。
葉子さんのご感想、穂村さまのご意見を読ませていただきそう感じました。
お葬式の複雑な空気感もよく感じられますよね。
故人を悼んで悲しかったり思い出話で笑ったり。どこか奇妙な空気。

生と死に関する考え方や感じ方は人それぞれですね。
正直僕にもそれがなんであるのか。という答えはもっていません。
ただ、最近ふとおもったことは
新しい出会いに浮かべる「微笑み」と別れでながす「涙」。
グラデーションの狭間に紛れ込むこれらはいったいなんなのだろう。
こんなことを不思議に感じたりしました。
これに対しても答えはなく、仮にあったとしても僕にはきっと
それを言語化することはできないでしょう。

「連続」という言葉は、一見、未来をさしているようであるけれど、
じつは過去に向けられる言葉なのでしょうね。

投稿: くにひろ | 2008年7月25日 (金) 13時51分

くにひろさん、素敵なコメントありがとうございます。
私はもともとタオ的な考え方に共感するところが多かったのですが、岡倉天心の『茶の本』を訳する仕事をして以来、ますますタオに傾倒するようになりました。かの本は、茶道に寄せたタオの書でもあるのです。
そのタオにもとづけば、生と死もふくめて、あらゆるものがひとつのエネルギーの「ある一面」のあらわれであるように思えます。
出会いの微笑も、別れの涙も、同じひとつのもの。
…と知りつつ、日々の小さなできごとに喜怒哀楽を感じるのが、生きている人間の醍醐味なのかもしれません。

投稿: 川口葉子 | 2008年7月27日 (日) 05時33分

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