真狩村のコンフィチュール・こぼれ話
本日AllAboutでご紹介した真狩村のコンフィチュール職人の鈴木方子さん。効率や経済的発展よりもクオリティを大切にしたいのでチームを作らず、なにもかもひとりでおこなうという心意気に、同じ心意気をほそぼそと掲げる「ほそぼその会」のひとりとして心から共感しました。
鈴木さんは、好きなこと、いやだからしたくないことの判断が本当にはっきりしていらっしゃいます。その言葉には、ものづくりの仕事をする人々ならみなおそらく出会うであろう選択のシーンで、そのつどしっかり迷ったり悩んだりして自分なりの結論を出したのだな、という背景が見てとれました。
作り手の迷いが商品に表れていてはいけませんから、お客さまの前にさしだすものは潔く。たとえば試作品として味見させていただいた、2種類の素材を合わせた「葡萄と小豆のコンフィチュール」。おいしいにもかかわらず、鈴木さんは商品化はしませんとおっしゃるのです。なぜ、と尋ねると、
「葡萄だけのほうがおいしいから」。
単品のままでおいしい素材を、わざわざ別の素材と組み合わせて新しい味を作るからには、ふつうにおいしいだけでは不充分。単品の味を超えるおいしさでなくてはいけない、という基準が彼女の中にあるのでした。
もしかしたら、葡萄の透明感のある風味と、小豆の穀物っぽいざらざら感のある風味との組み合わせが、双方の魅力をひきたてる結果にはならないと判断されたのでしょうか。ちょっともったいない。
でも、ものを書く人々の足もとにも、数えきれない書き直しや削除や、1ページを書くために読んだ何冊もの資料や、日の目を見ることのないプランがどっさり埋もれていますよね。光の当たる部分はごくわずかです。
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コメント
葡萄と小豆のコンフィチュール、、、
とってもおいしそうです!!豆好きなので
そんなおいしそうなものが作られているなら
ぜひぜひ試したいです、、、
鈴木方子さんのつくるコンフィチュールどれも
おいしそうですね★
サクランボも気になります!!
でもやっぱり小豆が気になります、、、、
投稿: Feice | 2008年3月13日 (木) 16時12分
小豆を葡萄と組み合わせたコンフィチュールは、きれいな葡萄色をしていておいしかったですよ。
私も豆が大好きです。とくに空豆! さやごと焼いて軽く塩をふっただけの空豆はたまりません。うちで作るお酒の肴No.1です。そろそろ季節がやってきて、スーパーにも並び始めたので嬉しくてわくわくしています。
投稿: 川口葉子 | 2008年3月14日 (金) 02時14分
はじめまして。
カフェと美味しいモノ、それをさしだす人々への温かいまなざしにあふれた記事を
いつも楽しませていただいてます。
仕事以外にほそぼそと…というのはおこがましいので、ちまちまと、
やっていることがあり、この記事にハッとさせられ、初コメントです。
一ページどころか、たった一行のためにいろんな資料をあさっていると、
いつのまにかとても饒舌になっていて、あれもこれも語っている。
でも、その中から受け手が選んでくれたらいいんじゃないか…と思うのは、
作り手として傲慢だ…と気づかされました。
“潔く”。
いろいろな中から磨き上げたひと粒だけをそっと置く…、
そんな作り手をめざしたいです。
投稿: kyono | 2008年3月15日 (土) 10時10分
kyonoさん、はじめまして。素敵なコメントをありがとうございます。
自分が手にしたたくさんの情報の中から、何を語り、何を語らないかというのは難しい選択だなと、よく考えます。
ものごとのエッセンスを正しく抽出する力が必要なのはもちろんのこと、あえて触れなくてもいいことに、どこまで触れずにいられるかという忍耐のようなものも。
まだまだ、ひと粒を磨きこむ修業が足りないようです…。
投稿: 川口葉子 | 2008年3月15日 (土) 22時57分