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2007年11月27日 (火)

『すべての美しい闇のために』

長屋和哉氏は八ヶ岳在住の音楽家であり、同時に、魂に深く沁みいる素晴らしい文章を書くひとでもあります。私は何年もにわたって長屋氏がサイトに綴るエッセイ「Naaga's Voice」に魅せられてきました。

たとえば、長屋氏の友人が焚き火のそばで語った、自身の人生の崩壊と再生の物語。地下鉄のホームで意識を失ったときにあらわれた、幻視のようなヴィジョン。その不可思議なヴィジョンは、長屋氏の言葉を通して読む者の脳にも流れ込んできます。

Naaga's Voiceはメールマガジンでも配信され、私はそのメールの多くを深夜に開きました。そのたびに、遥かな八ヶ岳の暗闇の中でひとつの巨大な鐘が鳴り響くのをイメージしたものです。鐘の振動が夜の闇を震わせながら地表を巡り、その一波がこの空間にも到達して私の魂をこんなにも共振させているのだと。

共振。

土地のキーワードの共通点の多さにも驚かされました。「沖縄よ、波の上で舞え」から綴られはじめた沖縄・久高島、そして吉野、熊野、ハワイ島。私が旅をしたそれらの場所に、長屋氏も地霊に呼び寄せられるようにして旅をしており、太古から彼を待ちうけていた精霊に贈りものを--それは輝かしいものばかりとは限らないようですが--与えられていたからです。

1冊の書物としてまとめられたかたちで、長屋氏の文章をじっくり読みたい。そう切望していたのは、やはり私だけではなかったようです。この11月に春秋社から『すべての美しい闇のために』と題された本が出版されたという嬉しい知らせが飛び込んできました。やるべきことを全部ほったらかしにして読み耽ったのは言うまでもありません。

本にはNaaga's Voiceの中から数編が、より強く精錬され大きな流れを持つかたちとなって収録されています。最後に収められた息をのむような一編『光の川にたどり着くまで』は、私たちの次の一歩を虚空へ、絶対的な暗闇へと誘ってやみません。日常生活の中で踏み出す何気ない一歩が、いきなり不可解な世界の裂け目へと私たちを落下させる瞬間があるのだと。

世界の裂け目の奥に横たわる闇。それはおそらく、光輝く大河となるであろうひとすじの細い源流が生まれる場所。

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