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2007年10月21日 (日)

サムライコーヒードリップ

YouTubeで学ぶコーヒーの入れ方」という、ラテアートやコーヒードリップの動画を集めた楽しいサイトがあります。バリスタがフォームミルクで一気にロゼッタ模様をトリプルで描きあげる光景などは、何度見ても感心してしまいます。

そのサイトで「藤岡流コーヒーの極意」という珍しい動画を拝見しました。俳優の藤岡弘さんが披露する、コーヒーと茶道をミックスさせた渾身のドリップ方法。それはもはやドリップというより、マントラを唱えながらおこなう祈祷の様相を呈していますが、茶道がもともと宗教儀式から発展したものであることを思えば、ある意味では正統派なのでしょうか。

藤岡さんは生豆の焙煎から始める(!)そうで、この日は、原種に近いコーヒーの木を無農薬栽培したというペルーの豆をお持ちでした。スタジオではドリップのお点前のみが披露されましたが、それは、オーソドックスなドリップ方法を習った人々が口々に叫びだしそうなユニークなもの。「熱血サムライドリップ」とでも呼びましょうか。画面の中のあまりにも厳粛なお姿を前に、笑っては失礼、謙虚であれ……と自分に言い聞かせたものの、やっぱりおなかがふるえてしまいました。

藤岡さんはまず、挽いたコーヒーの粉とドリップ器具にむかっておもむろに合掌なさいました。そして、コーヒーの粉に顔を埋めんばかりにかがみこみ、最初の言霊を投げかけました。
「ありがとう、ありがとう、ありがとう……おいしいコーヒーになってください」
合掌とマントラは、彼が精神統一してサムライドリップの儀式を進めるあいだ、節目ごとに何度も繰り返されます。

その土地の名水で淹れたコーヒーは土地の味がするという発言には共感しますし、藤岡さんが本当にコーヒーを愛し、深く追究されているのが伝わってくるので、彼が言う「魂を込める」「気を入れる」「和敬清寂」「おもてなしの心」「心を点てる」にも基本的に共感はしたのですが。

サーバーに最初に落ちてきたコーヒーは“アクを取るために”捨ててしまう(中国茶みたいですね。そちらはホコリなどを落とすためですが)、それなのに最後の1滴まですべて落としてしまうなど、セオリー無視のドリップですが、もしかしたら本当においしいのかもしれません。そして、ドリップしながら「おいしくなれ!」と念じて心を込めるのは、多くの人々が意識的にであろうと無意識的であろうと実践していることでしょう。

しかし、しかしです。あまりにも目の前でダイレクトに“気”や“魂”を濃く熱く投入したコーヒーを差し出されると、正直なところ飲むのに腰がひける……という発見をしてしまったのでした。

あ、正しくは「藤岡弘、」と最後に「、」を表記するのですね。「、」には「我未だ完成せず」などの意味が込められているそうですが、私にはこの「、」が、ドリップされたコーヒーの最後の1滴に見えてなりません。藤岡さんはボランティアで回るアジアやアフリカの国々で、このコーヒーのおもてなしをされているとのこと、頭が下がります。

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